備忘録101(2020.02.01)

今日の終業後は、スタッフ向けの内部講座(強制参加じゃないよ!)。利用者の家族をゲストスピーカーとしてお招きする「聞かせてください、親の思い」シリーズ。多分10年近くぶりの企画。

今回は、8年前に亡くなった利用者さんのご家族がゲスト。利用者ご本人が亡くなった後も、家族ぐるみでずーっと私たちとお付き合いを続けてくださっていて、いろんな形で応援していただいている、貴重でありがたい方々なのです。

懐かしい写真の数々もスライドで登場して、古株スタッフの面々は思わず微笑んだり涙ぐんだり…。温かな雰囲気に包まれた講座でした。でも、若い衆たちはどんな気持ちで話を聞いてたのかなぁ。置いてけぼりになってなかったらいいけど…。

お話を聞きながらぼんやりと感じていたこと。
当の亡くなった利用者さん(Sさん)は、亡くなる3年前に重篤な肺炎で入院。その時に気管切開と胃瘻造設の手術を受けて、人工呼吸器まで使うことになる。

つまり、それまで元気に出すことができていた「声」を失い、それまで口から食べることができていた「ご飯」を失うことになったわけです。息を吸って吐くことすら、機械に助けてもらうことに。

でもその手術と機械のおかげで身体も元気になり、退院して、再びうちのデイに通うことができるようになりました。その後も亡くなるまでの間に2度重篤な状態になって入院されますが、「その都度」奇跡とも呼べるような復活を遂げて、家族や私たちのところに舞い戻って来られました。

そういう過程を、入院中の支援や自宅支援、デイの現場でつぶさに目にしてきた私にとって、この「不屈のカムバック劇」はかなりの衝撃でした。

考えてもみてください。最初の入院で、声も口から食べる食事も、息を当たり前のように吸って吐く力も失ってしまうんですよ。一気に。果たして、もし私がSさんだっとしたら…多分その時点で完全に人生を諦めてしまう気がします。「もう無理」って。生きてんのが嫌になるんちゃうかって思うんですね。

でも彼は違った。声を失おうが、口からご飯が食べられなくなろうが、呼吸器の世話になろうが、決して「生き抜くこと」を諦めなかった。諦めなかったというより、多分Sさんの中では「あー、早く家帰りたいなー、デイでみんなに会いたいなー」ぐらいの感覚だったのかもしれません。でも、普通、そんなんで乗り切れます?気管切開と胃瘻と呼吸器ですよ?これはもう、いわゆる「健常者」と呼ばれている人種には恐らく体現不可能な「タフさ」なんやと思います。その「タフさ」に励まされた古株スタッフも少なくないでしょう。

「健常者では持ち得ない力」をSさんは備えていた。その力の源は何だったのか、直接Sさんに聞けたらいいんですが、多分家族との深い絆だったり、うちのデイという「場」が持つ魅力だったりしたのかもしれません。

そうやって、ご本人、ご家族、私たちスタッフ、お互いがお互いに「力」を与え合っていた「相互依存」的な関係性。この輪をもっと地域や社会に広げていくこともまた、Sさんが私たちに残したデッかい宿題なんやろうなぁ…

天国から見ててね、Sさん…と心の中で呟きながら家路につくのでした。